当直明けです。
今朝は8時に「胸が苦しい」と85歳の女性外来患者が緊急受診しました。
大動脈弁狭窄症(実際には連合弁膜症)によるうっ血性心不全でした。
9時半過ぎに訪問診療に出掛ける時間迄、処置を施しました。
酸素・点滴指示、尿道カテーテル管理、心拍監視装置装着。
胸部X線では、両側に胸水貯留。心臓超音波検査では、心臓の壁の動きが
かなり弱い状態が確認されました。
昨年暮れから病状が不安定だったようですが、その都度外来担当医が内服利尿剤を
工夫して処方することにより、改善を観ていたようです。
胸が苦しくなったのは、本日午前2時。夜中だった為か?我慢していた様子です。
私は、昨夜1時半過ぎ迄眠れず、6時過ぎには起床していた為、朝からトップスピードでの仕事開始。
患者さんが「苦しい」症状を夜中、我慢していた結果、一刻を争う病状ですから、懸命の処置です。
ただ、午前中の利尿剤静脈注射に反応乏しく、余談を許さない状況が続きます。
訪問診療から帰院後、御家族に病状をご説明しました。
昨夜迄、夕食をしっかり摂取されていた事もあり、高齢のご主人は私の説明にも
信じられない様子でした。
ご主人「どの位入院する必要がありますか?」
私「1日でも長く入院出来る様に懸命な治療・処置を施しております。」
ご主人「・・・・・・?」
私の説明の意味を受け入れる事が出来ません。
私「今日・明日オシッコが出ないとジリ貧です。危篤状態です。」
「いつ何時、病状が急変するかもしれません。」
「高齢で、心臓弁置換術等の根治手術は出来ませんので」
「お別れの覚悟も!」
やっと、状況が理解出来たようでした。
今夜の治療に反応するかにかかっております。例え尿排出があっても
心臓機能が著しく低下している為、その後も厳しい状況には変わりない事でしょう。
心臓弁膜症の診断が何時なされたか?
その年齢によっては、弁置換術が出来たタイミングもあったのかもしれません。
ただ、手術を受けないので済むのなら・・・。という患者側の気持ちと
出来ればやらないので済むならと思う医師側の気持ちも理解出来ます。
何とか一山・二山乗り切って、私が次回出勤する26日迄頑張って欲しいと願います。
心臓弁膜症というと、家内の伯母も長年患っておりました。
若い頃から心臓が弱かったそうで、あるタイミングで人工弁置換術を受けられました。
御存知の方も多いでしょうが、この人工弁には耐用年数(約10年)がございます。
その時が来たら、再置換をしないとなりません。
ただ、伯母は90歳近い高齢でしたので、再置換を行わない道を選びました。
その結果当然、心不全併発し、あっという間に心臓停止となり亡くなりました。
いわば、本人、家族が納得の上、選んだ道といえます。
御本人も了解していたからか、覚悟の上の見事な最期とも感じられます。
昨年から通院の頻度が多かったとはいえ、昨夜迄一緒に生活していたご家族に
とっては、この現実を受け入れる事は難しいかもしれません。
私自身、50歳を過ぎ、人生の最期に、悔いなし。大往生と思える為には?と
自問自答する事が多くなりました。
その時にジタバタする事無く、笑顔で家族に「有難う」と言えるようにするには・・・。
やはり、今を一所懸命生きる事なのだろう!と感じております。
困難、試練があっても、真正面で受けとめ、努力し乗り切っていく事が出来れば
本望なのではないかと思います。
自分の目の前に見える外来及び入院患者さん達だけでなく、自身の眼前に現れない
患者さん達の為にも役立つ医療、活動をしていきたいと考えます。
これが私の本望、野望です。
- 2015/01/23(金) 22:22:45|
- 日々の診療徒然
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