本日は午後から訪問診療へ出掛けました。
多系統委縮症という神経難病の方です。現在、訪問診療で2例担当しております。
この病気は、Multiple system atrophy: MSAと言われ、多くの場合は40歳以降に発症し、
小脳や脳幹が萎縮してしまう原因不明の難病です。男女比は男性が女性の約2倍いる
といわれており、現在、日本国内では、約1万2000人の患者がいるとされています。
症状の出現の仕方が3通り有ります。
小脳性の運動失調である場合は、①「オリーブ橋小脳萎縮症 (olivopontocerebellar atrophy: OPCA)」、
パーキン病のような症状である場合は、②「線条体黒質変性症」、
起立性低血圧など自律神経障害の症状がある場合は、③「シャイ・ドレーガー症候群」と呼ばれます。
日本で最も頻度の高いタイプは、①のオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)といわれています。
起立・歩行しようとする時に、ふらつき、転びやすくなったり、呂律が回りにくくなったりする等の症状で
これは、小脳性運動失調によります。
②線条体黒質変性症ですと、パーキンソン症状である動作が緩慢となり、関節が動かしにくくなったり、
筋肉がこわばったり、すくみ足をしたりといったパーキンソン様の症状がみられます。
そのため、初症状が出始めた当初より、パーキンソン病と区別する必要があります。
パーキンソン病と比較すると、安静時に手の震えが少ないですが、症状の進行は早く、
抗パーキンソン病薬の効果はあまりないとのことです。
③シャイ・ドレーガー症候群の場合、起立時のめまいや排尿障害、下痢や便秘などの
自律神経症状が症状として現れます。頻度の高い自律神経症候としては、インポテンツ(勃起障害)、
呼吸障害、発汗障害などがあげられます。
罹患した早い段階で、睡眠時の喘鳴(ぜーぜーといった呼吸)や無呼吸などの呼吸障害の症状がある
といわれています。呼吸障害の原因の一つとして、呼吸中枢の障害による病気もあるので、たとえ気管
切開をおこなったとしても突然死の可能性があります。
多系統萎縮症が発生する原因について、遺伝などの研究が進んでいますが、まだ十分に解明されていない
のが現状です。多系統萎縮症は難病ですが、薬物療法によって、症状が改善する薬があるそうです。
パーキンソン症候群が症状として出現している人には、パーキンソン病に使用するエルドパという薬が処方されます。
小脳性運動失調に対しては、タルチレリン(セレジスト)などを用い、運動・作業のリハビリテーションを行います。
起立性低血圧の症状に対し、塩分摂取や下肢弾性ストッキング等を装着、血圧を上げる薬、ステロイド系の塩分を
保持する薬の服用等があります。。
尿漏れ、頻尿などの過活動膀胱による排尿障害には、抗コリン薬を用います。残尿が100ml以上ある場合、自己導尿を行います。
睡眠時無呼吸、喉頭喘鳴がある場合は、CPAP(シーパップ)と呼ばれる簡易呼吸補助器を就寝中に装着します。
また、身体に必要酸素量計測の為、酸素飽和度計測定します。。
予後は、症状出現後、平均約5年で車椅子使用、約8年で寝たきりとなり、多系統萎縮症にかかっている期間は9年程度と
の報告があります。
私の担当するケースは2人とも60代。一人は男性、もう一人は女性です。
CPAPの導入もあり、又自己導尿の指導も受けておられます。
急変時の対応についての話し合いも既に行われており、気管切開も視野に入れております。
運動療法士が訪問リハビリを実施中ですが、徐々に言語障害が進行している様子です。
担当のO運動療法士さんが手作りの言語表を作成してました。
トイレ歩行についての優しい心配りが感じられます。

国が指定する難病なので、医療費控除が受けており経済的負担はありませんが、やはり健康は重要であると
改めて感じます。
診療所を出る14時過ぎに、「清原初公判云々・・・」とTVが報じておりましたが、
一流のスポーツ選手だったが故、親から貰った、いや神様から恵まれた自身の身体に対しての冒涜・健康を
軽んずる愚行に憤りを覚えました。もしかすると一流ではなかったのでは・・・・・(人間として)。
生きたくとも生きれない人、好きで病気になった訳でない方々の想いを察すると、健康に感謝し、
親・神様に感謝し、精一杯人の為に有難く生きる事。
罪を犯す前に知るべき事だったのでしょうね。
日常診療をしながら感じてしまう今日一日でした。
明日は東京からの訪問客があります。19時からの面談ですが、『キクイモ』を如何に多くの方々に
お伝えするか?!正確な情報を発信・提供するか?!を相談致します。
生を受けたからには、人様のお役に立つ、真のライフワークを実践したいと感じます。
疲れた!等と言っている暇はありませんね。
- 2016/05/17(火) 19:44:49|
- 日々の診療徒然
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